公開日: 2024.02.27 更新日: 2024.05.10
ブッキングカーブとは?ホテル経営で活用するメリットも解説
ホテル経営においては、部屋の予約数を管理し、キャンセル数や売れ残り数を減らしていくことが大切です。宿泊予定日までの客室予約数の推移・傾向を把握するために利用できるグラフが、ブッキングカーブです。
この記事では、効率的なホテル経営の実現に欠かせないブッキングカーブとは、どのようなものであるのかについて、詳しく解説します。さらに、ブッキングカーブを活用するメリットや、ブッキングカーブの作成方法についても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
1.ブッキングカーブとは?
ブッキングカーブとは、宿泊施設などが宿泊予定日までの客室予約数の推移や傾向を把握する際に利用するグラフです。グラフでは縦軸に客室稼働率を、横軸に宿泊日までの残り日数を配置し、予約推移を示します。予約(ブッキング)の軌跡が弧(カーブ)を描く形状から、その名称が付けられました。ブッキングカーブの利用により、日々の予約・販売状況を可視化し、客室の利用率(OCC)や平均室料(ADR)など、レベニューマネジメントに欠かせない情報を取得することが可能です。
ブッキングカーブは単にブッキングペースの可視化にとどまらず、施設の経営戦略にも深く関わります。たとえば、宿泊料金設定や客室数に基づいて、稼働率を高めるための宿泊プランを立てる際などです。高級感を重視する施設ではブランディング戦略を、回転率を重視する施設では価格戦略の調整を行うなど、経営者が重要な販売手法の決定を下すのに欠かせません。
1-1.ブッキングカーブの前提になるレベニューマネジメント
ブッキングカーブはレベニューマネジメントの一環として活用され、宿泊施設の予約状況や価格設定の最適化に役立てられます。
レベニューマネジメントは、需要の予測と適切な販売管理によって収益を最大化する経営手法です。特に、ホテル業界や航空業界のように、サービスの在庫が繰り越せない産業で広く採用されています。固定費の比率が高く顧客数に依存しないコスト構造を考慮し、商品やサービスの料金を顧客の需要に応じて変動させる手法です。
レベニューマネジメントは、「商品の完売=収益の最大化」という考え方に基づいています。通常料金での売上確保に向けて一定の在庫を保持しつつ、余剰部分を割安料金で売り切る戦略です。
2.ホテル経営においてブッキングカーブを活用するメリット
ホテルや旅館経営におけるブッキングカーブの活用は、経営効率と収益性の向上に大きく寄与します。売れ残りのリスクを減らし、キャンセル数の正確な予測が可能となるためです。また、部屋の適正価格を把握するのも容易になるため、価格戦略の最適化が実現するでしょう。
以下では、ホテル経営におけるブッキングカーブ活用のメリットを3つ解説します。
2-1.売れ残りを減らすために活用できる
ブッキングカーブを活用すれば、売れ残りを効果的に減らすことが可能です。グラフは、過去の予約データに基づいて需要を予測し、宿泊当日までの最適な販売価格を示します。
たとえば、宿泊日が近付くにつれて、予約数が少ない場合や稼働率が低い場合には、価格調整が必要です。ブッキングカーブを使用すると、これらの状況に対して適切な価格設定が行えるようになります。
予約動向や需要の変化は季節やイベントによって大きく異なるため、精確な予測は困難です。しかし、ブッキングカーブは過去の同月同日のデータを参考にして、現在の市場状況に最適な価格のヒントを提示します。過去の予約傾向を活用しながら、現在の市場条件に応じて柔軟に価格を設定すれば、客室の売れ残りを最小限に抑えられるでしょう。
2-2.キャンセル数を正確に見越せる
ブッキングカーブを活用すると予約キャンセル数の正確な予測が可能となり、稼働率の最適化に貢献します。ホテル経営では、高い稼働率と適切な客室単価のバランスが収益に直結しますが、このバランスに影響を与えるのがキャンセルの発生です。
多くのホテルでは、事前にキャンセルの発生を想定して部屋数よりも多い予約数を受け付けています。キャンセルが多すぎると販売済みの部屋が空室となり、稼働率が低下します。反対に予想以上にキャンセルが少ない場合、オーバーブッキングとなりかねません。
ブッキングカーブは、過去のデータを参照して時期別の大まかなキャンセル発生率を予測します。ブッキングカーブの予測により、キャンセル分を見越した適切な数の予約受付ができれば、高い稼働率を維持しつつもオーバーブッキングの防止が期待できるでしょう。キャンセルの見込み数が明確になることで、収益を最大化するための客室価格設定や販売戦略もより効果的に立案できるようになります。
2-3.部屋の適正価格を把握できる
ブッキングカーブを活用すると、部屋の適正価格を把握した効率的な販売戦略の立案が容易となります。ブッキングカーブは、過去の予約データを基に統計を取り、適切な販売単価の設定を支援するツールです。データ量が多いほど、販売価格設定の精度が向上し、より信頼性の高い価格決定が行えるようになります。
ブッキングカーブとレベニューマネジメントツールを組み合わせれば、日ごとや月ごとの収益目標と現在の実績の乖離を一目で確認できるのも便利です。特定の宿泊日までに残っている部屋を、どの程度の価格で何部屋分販売すべきかの判断が容易になるでしょう。このアプローチは、特に客室需要の変動が大きい季節やイベントが開催される時期において、収益の最大化に重要な役割を果たします。
3.ブッキングカーブの作成方法
ブッキングカーブの作成方法は、以下の通りです。
(1)データを収集する
まず、過去の予約状況や客室販売数のデータを収集しましょう。蓄積されたデータは、ブッキングカーブを作成する上での基礎となります。反映するデータが豊富であればあるほど、統計の正確性と精度が向上するため、できるだけ多くのデータを集めるのがポイントです。
(2)一覧表を作成する
過去の予約状況や販売室数のデータを収集し、以下のように一覧表にします。
【7日分の作成例】
○日前 | 販売室数 | 販室ペース | 前日差分 |
---|---|---|---|
0 | 100 | 100% | 100% |
1 | 90 | 90% | 15% |
2 | 85 | 85% | 17% |
3 | 68 | 68% | 18% |
4 | 50 | 50% | 7% |
5 | 43 | 43% | 8% |
6 | 35 | 35% | 8% |
7 | 27 | 27% | 6% |
販売室数に入れるのは、○日前の販室累積です。「販室累積」とは、「○日時点で宿泊予約が入っている室数」の累積です。販室ペースと前日差分は、以下の式で求められます。
販室ペース | ○日前の販売室数÷0日前の販売室数×100(%) |
---|---|
前日差分 | 販室ペース-前日の販室ペース |
(3)一覧表をグラフにする
販売ペースと前日差分のデータを用いてグラフを作成します。グラフの縦軸が販室ペース、横軸が○日前です。販売ペースを赤色、前日差分を青色など、判別しやすい色で表示するとよいでしょう。
Excelの場合は、グラフにしたい「○日前」と「販売室数」の範囲を選択し、「挿入」→「グラフの種類の変更」→「マーカー付き折れ線」でグラフ化できます。スプレッドシートなら、同様に範囲を選択して「挿入」→「グラフ」でOKです。
4.ホテル関連のデータ集計・分析には「予約システム」がおすすめ
ホテル経営において、データの集計と分析は業務の改善と効率化に欠かせません。この目的を達成するのに最適なツールが「予約システム」です。予約システムとは、顧客の予約情報を一元的に管理し、効率的に業務を行うためのシステムです。リアルタイムでの予約状況の把握や顧客管理、予約枠の設定、メール通知、そして顧客分析など、多岐にわたる機能を提供します。
「リザエン」の予約システムは、直感的で使いやすい操作性と、予約状況を瞬時に把握できる台帳画面が特徴です。予約の検索機能も充実しており、顧客名や電話番号など、さまざまな条件で迅速に予約情報を検索できます。予約情報を簡単にCSVファイルで出力できるため、データの集計や分析に利用しやすいのも特徴です。また、インターネットだけでなく、電話や来店での予約もリアルタイムで統合管理できるため、オペレーションの効率化が図れます。
まとめ
効率的な予約数の管理・部屋の適正価格の把握を実現するためには、ブッキングカーブの活用が欠かせません。ブッキングカーブを活用することで、レベニューマネジメントによる「部屋の完売=収益の最大化」を実現することが可能です。
効率的なホテル経営に欠かせないデータの集計・分析を適切に実施するためには、予約システムの導入をおすすめします。予約システムの「リザエン」では、予約の効率的な管理だけではなく、予約に関連する多様なデータを集計して分析できます。効率的なホテルの経営を実現させたい方は、ぜひリザエンの導入をご検討ください。